異常検知
異常検知の難しさは、異常の実例がほとんど手に入らないことにあります。このテーマでは、通常データだけを頼りに分布の変化を捉える方法を、密度比推定を基礎として研究しています。代表的な成果は、ICML 2021 の Non-negative Bregman Divergence Minimization for Deep Direct Density Ratio Estimation(Kato and Teshima, 2021)です。
扱う問題
不正や故障、データ品質の劣化を見つけたいとき、異常のラベルが付いたデータを大量に集めることはまずできません。そこで、通常データの分布を基準とし、新しい観測がその分布からどれだけ外れているかを密度比で測る、という定式化を使います。密度比を深層ニューラルネットワークで推定すると表現力は上がりますが、訓練損失だけが不自然に小さくなる過学習が起きます。私たちはこの現象を分析し、経験損失に非負化の補正を加えることで深層モデルでの推定を安定させました。
応用として、財務諸表の監査サンプリングを逐次的な仮説検定として定式化し、統計的な保証を付ける研究も進めています。異常検知の方法はどんな問題にも最良というわけではなく、異常の実例が十分にあるなら通常の分類のほうが素直です。密度比に基づく方法が生きるのは、異常例を集めにくい場面です。
中心となる研究
非負 Bregman 密度比推定のページで、過学習が起きる仕組みと補正の設計、異常検知での性能を説明しています。
研究の系列
- 2026年
- Sequential Audit Sampling with Statistical Guarantees。監査サンプリングを逐次検定として設計し、保証を与える研究。
- 2023年
- Unified Perspective on Probability Divergence via Maximum Likelihood Density Ratio Estimation(AISTATS 2023)。分布間の差を測る指標を密度比推定の観点から統一した理論研究。
先行研究との関係
密度比を異常検知や分布シフトに使う一連の方法論は、杉山将らが体系化しました(Sugiyama, Suzuki, and Kanamori, 2012, Density Ratio Estimation in Machine Learning)。私たちの研究は、この方法論を深層モデルで使うときに生じる問題を特定し、補正を与えるものです。理論的な位置づけは密度比推定のページで詳しく説明します。
ビジネスとの接続
不正検知、設備や取引の監視、データ品質の管理のように、異常の実例が少ないまま検知の仕組みを作る必要がある場面を想定しています。監査業務への統計的手法の導入も対象です。こうした課題のご相談はお問い合わせフォームからお送りください。