最適腕識別
複数の選択肢から、期待成果が最も高いものを限られた試行で選び抜く。最適腕識別と呼ばれるこの問題は、多腕バンディットの一分野で、実験計画とも深くつながっています。このテーマでは、試行回数が固定された設定での標本配分と決定規則を研究しています。主論文は Minimax and Bayes Optimal Best-Arm Identification(Kato, 2025, arXiv:2506.24007)です。
扱う問題
固定予算の最適腕識別では、決められた試行回数を使い切ったあとに一つの腕を推薦し、その腕が真の最良からどれだけ劣るか(simple regret)で戦略を評価します。最悪の場合に備えるミニマックス基準と、事前分布のもとで平均的に良さを測るベイズ基準は、これまで別々の戦略設計につながってきました。主論文では、一様なパイロット段階で候補を絞って分散を推定し、ガウス型のミニマックスゲームを解いて配分と決定規則を定める二段階の戦略が、二つの基準の最適性を同時に達成することを、定数まで一致する上下界とともに示しました。
中心となる研究
Minimax and Bayes Optimal Best-Arm Identification のページで、戦略の構成と最適性の内容を説明しています。
研究の系列
- 2026年
- The Role of Contextual Information in Best Arm Identification。文脈情報が識別の効率に与える影響の分析。
- 2024年
- Generalized Neyman Allocation for Locally Minimax Optimal Best-Arm Identification。分散に応じた標本配分の局所最適性。
- 2024年
- Rate-Optimal Bayesian Simple Regret in Best Arm Identification(Mathematics of Operations Research)。ベイズ基準での simple regret の速度最適性。
先行研究との関係
最適腕識別の統計的な限界については、固定信頼度の設定を中心に Kaufmann らが標本複雑度の理論を整えました(2016年、On the Complexity of Best-Arm Identification in Multi-Armed Bandit Models)。固定予算の設定では、Carpentier と Locatelli が誤識別確率の下界を示しています(2016年、Tight (Lower) Bounds for the Fixed Budget Best Arm Identification Bandit Problem)。バンディット全般の体系は Lattimore と Szepesvári の教科書(2020年、Bandit Algorithms)にまとまっています。私たちの研究は、固定予算の設定で上下界の定数まで一致させ、ミニマックスとベイズの両基準を一つの戦略で達成した点に位置づけられます。